安全靴の種類と形状・素材・規格の選び方|買い替え・交換の目安時期
安全靴の種類と形状・素材・規格の選び方|買い替え・交換の目安時期
危険な作業を行う建築・工事現場や工場において、足をしっかり保護する安全靴は作業服と並んで重要なツールです。一口に安全靴と言っても規格・形状・性質はさまざまであり、職種や作業環境に合ったものを厳選する必要があります。安全靴の劣化からくるストレスや予期せぬ事故を防ぐため、適切なタイミングで新調することも大切です。
当記事では、安全靴の規格や選び方のポイントと、交換のタイミングについて解説します。
安全靴はつま先を保護するための先芯と滑り止めを備えた靴であり、主に建築・工事現場や工場で用いられます。安全靴を構成する主なパーツは、次の通りです。
パーツ | 概要 |
---|---|
甲被(アッパー) | 靴の表面を覆う部分です。 |
先芯(トゥーガード) | 甲被の内部に固い芯をつけて、つま先を守ります。釘などの危険物を踏み抜かないよう、中敷や靴底に先芯をつけることもあります。 |
シュータン(ベロ) | 甲被内側の中央にあり、泥除けの役割を果たします。 |
中敷(インソール) | 足裏と接する部分です。 |
靴底(ソール) | 滑り止めがついており地面と接するアウトソール、アウトソールと甲被の間のミッドソールからなります。 |
1-1.安全靴の買い替え・交換に適した時期
質のよい安全靴でも、経年劣化や破損で性能は下がります。安全靴を履いていて次のようなサインが現れた場合は、新しいものと交換しましょう。
【安全靴の買い替え・交換に適した時期】
- 甲被が破れて着脱や歩行に支障をきたす、または先芯が露出している
- 甲被と靴底の間に破れ目ができ、足が前へ滑る
- 靴底にひび割れ・剥がれがある
- 踏みつけ部の滑り止めが摩耗し、凹凸の差が2mm以下になっている
- 踵部分が大きく摩耗している
- つま先に強い衝撃を受け、先芯が破損または変形している
これらのサインはあくまでも目安であり、実際の交換時期は安全靴の用途や使用環境によって変わります。
安全靴にはさまざまな種類があり、用途や環境に合わせて選ぶことで安全性と作業効率が大きく向上します。職場から支給されたものを使うこともしばしばですが、自分で購入する場合は現場での作業内容だけでなく、自分の足の形に合ったものを選ぶことが大切です。
2-1.形状
安全靴の主な形状とそれぞれの特徴は、次の通りです。安全靴を形状で選ぶ際の参考にしてください。
種類 | 特徴・活用シーン |
---|---|
短靴 | ローカットスニーカーに近い形状で着脱しやすい短靴は、一般的な作業全般に適しています。 |
中編上靴 | 足首を覆うハイカットタイプの中編上靴には、足首から溶接火花や砂・切子が入りにくいというメリットがあります。溶接現場や金属加工現場に向いている他、歩きやすいことから運搬作業にも適しています。 |
長編上靴 | 脛までを覆う長編上靴は、ズボンの裾を靴の中に入れて引っ掛かりを防ぐことができます。主に、建築・土木作業や高所での作業に向いています。 |
半長靴 | 半長靴には紐やマジックテープがなく、ゴム長靴のように着脱しやすいことが特徴です。建築・土木作業に適している点では長編上靴と似ていますが、半長靴は靴を着脱する機会が多い現場に向いています。 |
プロテクティブスニーカー (プロスニーカー) |
プロテクティブスニーカーは、一般的なスニーカーのように軽くてデザイン性が高いことが特徴です。甲被には人工皮革やナイロン製のメッシュ素材が用いられ、主に軽作業に適しています。 |
2-2.素材
安全靴によく使われる素材の特徴と、それぞれの素材が適している主な場面は、以下の通りです。
パーツ | 素材の特徴・活用シーン |
---|---|
甲被 | 本革は熱や摩擦に強く耐久性が高いため、建築・溶接現場に適しています。合成皮革は、本革と比べて耐熱性や耐久性は低いものの工場・倉庫・運送など幅広い場面で利用可能です。
軽量・安価でデザインが豊富なナイロンは、工場・運送・軽作業・林業におすすめです。半長靴に用いられるゴムや総高分子は耐水性が高く、水気の多い現場に適しています。 |
先芯 | 鋼製先芯は強度が高く、危険物や重量物を扱う作業に適しています。
樹脂先芯の強度は鋼製よりやや劣るものの、軽くて冷えにくいことが特徴です。そのため、頻繁に動き回る現場や寒さにさらされやすい現場に適しています。 |
靴底 | 耐摩擦性・弾性が高い天然ゴムは、熱や油を使わない現場で幅広く活用できます。合成ゴムは天然ゴムの欠点を補う工夫がなされており、また色のバリエーションが多いため使う場所を選びません。EVA樹脂は軽くて耐水性が高く、水気の多い現場に適しています。 |
2-3.機能
多くの安全靴には、衝撃吸収機能や滑り止め機能の他に、さまざまな機能が加えられています。安全靴を選ぶ際は、素材や形状だけでなく機能をチェックすることも重要です。
タイプ | 特徴・活用シーン |
---|---|
耐熱タイプ | 耐熱性と断熱性が高い耐熱タイプは、炎天下での作業や熱を使う現場に適しています。 |
耐火タイプ | 熱だけでなく火にも耐えられる耐火タイプは、溶接・炉前作業に最適です。 |
帯電防止・制電タイプ | 帯電防止機能や制電機能付き安全靴を用いることで静電気によるスパークやホコリの付着を防ぎ、火災リスク軽減に役立ちます。ガソリンスタンドのように火気厳禁の現場や、電子機器を多く扱う現場に最適です。 |
耐水・耐油タイプ | 水や油で劣化しにくいタイプの安全靴は屋外作業や清掃作業、水・油・薬品類を扱う現場向いています。 |
耐滑タイプ | 滑りにくさを重視した耐滑タイプは、滑りやすい材質の床や斜面での作業に適しています。 |
2-4.サイズ
安全かつ快適に作業するためには、足に合う安全靴選びが欠かせません。安全靴を試し履きする際は、次のポイントを押さえましょう。
【安全靴を試し履きする際のチェックポイント】
- 立ったときに足全体がフィットする
- 靴紐を締めない状態で、かかとに人差し指が軽く入る程度の余裕がある
- 靴紐を締めると、先芯の端が親指手前のくびれのあたりにくる
- 足と靴それぞれの幅が最大となる部分にずれがない
- 歩行時に足の甲、踏みつけ部、かかと側の履き口が強く圧迫されない
一般的に安全靴のサイズは「25.0cm(EEE)」と表記されます。「cm」が示す足長は踵からつま先までの長さ、「E」が示す足囲は足指の付け根をメジャーで一周した長さです。足長は合っていても足囲や甲の高さが合わない靴を履くと、靴擦れにつながります。
安全靴を選ぶ際は事前の試し履きをおすすめしますが、職場から支給された安全靴が合わないときは中敷や紐の締め方を変えて対処するとよいでしょう。
2-5.規格
広義ではつま先や靴底を強化した作業用靴全般を安全靴と呼びますが、正式にはJIS規格品のみが安全靴です。また、近年は一定の強度と安全性を持ちつつより気軽に使えるJSAA規格品も普及しています。JIS規格とJSAA規格の主な特徴は、次の通りです。
JIS規格 策定団体 日本工業規格 正式な商品名 安全靴 認定条件
- 指定の素材を使用している
- JIS認可工場で製造されている
- 完成品性能を満たしている
分類方法
- U種(超重作業用)
- H種(重作業用)
- S種(普通作業用)
- L種(軽作業用)
甲被の素材 牛革
- 総ゴムまたは総高分子
特徴 高い安全性と耐久性を持つ 適しているシーン 重量物や危険物を多く扱う現場
- U種、H種…鉱山・鉄鋼作業など
- S種…機械・電気・石油作業など
- L種…倉庫内軽作業など
JSAA規格 策定団体 公益社団法人日本保安用品協会 正式な商品名
- プロテクティブスニーカー
- プロテクティブブーツ
認定条件
- 指定の素材を使用している
- 完成品性能を満たしている
分類方法
- A種(普通作業用)
- B種(軽作業用)
甲被の素材 牛革
- 人工・合成皮革
- ゴム
- プラスチック
- 編物
特徴 JIS規格品に比べてやや安全性・耐久性は落ちるが、デザインや履きやすさにこだわったものが多い 適しているシーン
- JIS規格品ほどではないもののある程度の耐久性や安全性を求められる現場
- 動きやすさやデザインを重視したいとき
出典: 日本規格協会(JSA)「JISってなに?WHAT’S THE JIS」
出典: 公益社団法人 日本保安用品協会「プロテクティブスニーカー型式認定書類、協会入会書類」
2020年に登場したJIS規格のU種は、H種の2倍の耐衝撃性能を持ちます。まだ歴史が新しいため知名度は低いものの、今後は特に危険度の高い現場で重宝されるでしょう。
安全靴の選び方に関するよくある質問
安全靴の選び方に関するよくある質問をご紹介します。
安全靴とは?
安全靴はつま先を保護するための先芯と滑り止めを備えた靴であり、主に建築・工事現場や工場で用いられます。
安全靴の種類と選び方は?
安全靴にはさまざまな種類があり、用途や環境に合わせて選ぶことで安全性と作業効率が大きく向上します。
職場から支給されたものを使うこともしばしばですが、自分で購入する場合は現場での作業内容だけでなく、自分の足の形に合ったものを選ぶことが大切です。
まとめ
作業現場で活躍する安全靴は、衝撃を吸収するだけでなく耐久性や耐滑性の高さも大きな特徴です。素材や形状などによってさまざまな特徴があり、使用シーンによって使い分けることができます。
国内の規格を満たした安全靴やプロテクティブスニーカーは高い性能を持ちますが、経年劣化したものや破損したものを使い続けると思わぬトラブルの元となる恐れがあります。新しい安全靴を購入する際は、今回紹介した情報を参考に安心安全に使用できる安全靴を選んでください。
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